今夜の花火終わるまで

関ジャニ∞が好きな人のただの日記です。

その鼓動が届く先を知る

関ジャニ∞の通算10枚目のアルバム「8BEAT」が本日11月17日、リリースされた。前作オリジナルアルバム「ジャム」から凡そ4年半ぶりとなるこのアルバムは、制作陣が「今の関ジャニ∞がどう見えるか?」というテーマの元、関ジャニ∞に提供した楽曲がこれでもかと詰め込まれた1枚となっている。

以下、原稿用紙37枚分になってしまった、Re:8EST editionを除いた全21曲の宣伝を込めたレビューです。

 

 

 

【全形態共通】

 

  • 8BEAT

アルバム名にもなり、1曲目を飾るこの曲、なんと作曲・編曲があの亀田誠治さん。この時点で既に「最高」が約束されている。横山さんのトランペットソロから始まり、ドラムが後を追いかける。ギター、キーボード、ベースが次々に音を重ねて行く。パズルが組み立てられるような、音がハマっていく気持ちよさ。音源だけなのに、ステージに立つ関ジャニ∞がそこに見える立体感が耳に届く。レコーディングで亀田さんが「ドームが見えるよ!」と叫んだエピソードがある程。でもこれは分かる。ドームが見える。今回はアリーナツアーでも、近い未来にドームで8BEATを鳴らす関ジャニ∞が確かにそこに見える、重厚感のあるサウンド。5つの音が混ざり合い絶妙なバランスを保って、きちんと関ジャニ∞サウンドとして成立している。始まりに相応しい、まさしくこのアルバムの顔となるインスト。

 

  • 稲妻ブルース

映画「土竜の唄」主題歌。キングオブ男!、NOROSHIに続いて3作連続で主題歌を務め、今回がその集大成。今一番音楽特番で披露する機会が多い、このアルバムのリード曲でもある。この曲が映画の主題歌になるまで、これでもないあれでもないと60曲以上のデモを聴いて選んだという一切妥協無しのエピソード付き。制作に拘るあまり、締め切りを過ぎてしまったという話も飛び出る程で、関ジャニ∞がこの曲にかける熱量を知る事ができる。靴を履いたままの足でドアを蹴飛ばすような、突然銃声を轟かすような勢いの掛け声で始まるイントロ。ギラギラしたイカついビックバンドサウンドに、贅を尽くした世界観のセットと衣装。地を這うような、野望を燃やすような真っ直ぐな歌詞。「夢は見るんじゃなく叶えろ」「愛は語るんじゃなく伝えろ」「俺とお前が」「出会えたキセキ」「最高で最強のこのキズナ」どんな言葉よりも関ジャニ∞を表しているこの歌詞を、5人で分けて歌っている。この世界観にいる関ジャニ∞を、嫌いな訳がない。

「ド派手にかますぜ祭りだぜ」という歌詞を、ここまでこの曲の強い世界観に負けずに歌えるのは関ジャニ∞だけかもしれません。ただのハッタリではない、彼らは本当に派手にかますし祭りにする。この曲に袖を通した関ジャニ∞が、涼しい顔で幾つものドアを蹴破っていく様は大変爽快。

治安の悪い関ジャニ∞は如何ですか?お好きなら是非ハマるべき1曲。ちなみに、テレビサイズでは放映されない2番のAメロとBメロの歌詞にとある仕掛けがある。正真正銘、伝説の3部作と言える。

 

  • 友よ

シンプルな衣装、マイクスタンド5本とバックに背負った同タイトルの文字。無駄なものを削ぎ落としたからこそ、曲のメッセージ性は強くなる。「なぁ友よ」という安田くんの印象的な歌い出しで始まるこの曲は関ジャニ∞の5人体制となって初のシングルであり、ドラマ「俺の話は長い」の主題歌である。

世の中には山のように応援歌と言われるものが多数存在するが、友よは応援する側と応援される側の矢印が存在しない珍しい曲だ。というのはこの曲は、関ジャニ∞が一見不特定多数の誰かに向けて歌っているようにも見えて、同時に、回り回って関ジャニ∞に対して歌われている楽曲でもあるからである。酸いも甘いも噛み分けた関ジャニ∞から真っ直ぐに飛んでくる「人生って最高だろう?」「だからやめられないんだろう」の矢印を受け取った時、この矢印を同じ勢いで関ジャニ∞に投げ返したくなる。この曲は、関ジャニ∞の覚悟と意地を表しているように思えてならない。だからこそ、この曲を聴く誰かに届いた分だけ、同じ想いが関ジャニ∞にも届いて欲しい。関ジャニ∞がもし終わっていたら、この世に存在しなかった曲であり、表に出る事はなかった関ジャニ∞の決意の曲。がむしゃらだけど、まだまだ足掻くけど、それでも良い。人生ってそういうものだから、と思える、等身大のメッセージソング。

 

FUJI Network.Song for Athletesとして起用された曲。今年の東京オリンピック中継やフジテレビのスポーツ番組で耳にする事が幾度となくあった。「凛」というタイトルからも分かる、息を飲むような神聖でピンと糸が張り詰めたような曲のイントロ。関ジャニ∞のコーラスから始まり、壮大な展開と固く結んだ決意を予見させる。起用されている通り、アスリートの方々やMVにも登場するように医療従事者の方に向けられたメッセージ性の強い楽曲ではあるが、これもまた「友よ」で先述したように、同時に関ジャニ∞へ返っていく楽曲だとも思っている。オリンピックを思い浮かべながら聴くと勿論応援ソングなのだが、この歌詞は大多数に当てはまる普遍的なものとなっている。この曲の歌詞に登場する「君」や「僕ら」は、ピンポイントで聴いた人に自分のことを歌っていると刺さりながら、幅広く多くの人に届く性質も持ち合わせている。関ジャムでもよく言われていた「誰にでも当てはまるような歌詞でありながら、この歌は自分の事を歌っていると思わせる事が大切」という事が思い出される楽曲。主語の範囲を広げられるのは、この曲が持つメッセージ性の強さと、関ジャニ∞の曲を届ける力があってこそだ。個人的にこの曲のMVの最後に安田くんがスターターピストルを放つ演出が好きだ。曲の最後に「よーいドン」を持ってくるあたり、この曲を聞いた誰かの、この曲が届いた誰かの、また、この曲を歌う関ジャニ∞の戦いは終わる事はないと示唆している気さえする。

 

  • キミトミタイセカイ

大倉くん主演ドラマ「知ってるワイフ」の主題歌。

始まりは繊細で優しげな音運び。落ち着いていて、大変耳心地が良いメロディーライン。一番のサビの後は関ジャニ∞のコーラスと共に一転して音の広がりを実感することができて、壮大な印象を受ける楽曲。二度美味しい。

また、大倉くんをはじめ関ジャニ∞の歌声の変化を一番感じることができる楽曲でもある。特に大倉くんは元々地声も低く安定していた低音パートや下ハモリを長年任される事が多かったが、17年のキャリアであっても、ここへ来てグループの為にと、ボイストレーニングに通い血の滲むような努力を経て、大サビの高音フェイクを担当している。ボイストレーニングに通う前は高音を歌う機会があっても本当に声を出しづらそうにしていた印象があったが、今は難なく歌えてしまっている。尚且つ喉の使い方が変わったので、今まで担当していた低音にもより深みが出ていて圧巻されっぱなし。関ジャニ∞全員の歌が格段に変わりはじめたのがこの「キミトミタイセカイ」でもある。彼らにとって間違いなくターニングポイントであり、楽曲の壮大さに負けない全員の変化を感じ取ることができる1曲。歌い方に変化はありながらも、きちんと5人のバランスが取れており、今後への無限の可能性も感じる。関ジャニ∞が送る、本気のラブソングバラード。

 

  • Let Me Down Easy

川谷絵音さん作詞作曲。EDM調をベースとして、テンポ展開や曲展開が細かく行われていく難解な1曲。ボイスチェンジによって加工された関ジャニ∞の歌声がまたこの川谷さん節炸裂の楽曲とマッチしている。声の低さが強調されて心地良い重力を感じる横山さん、安定した歌い方が無機質になり曲の雰囲気に合っている安田くん、砂糖のような甘い歌声に適度な湿度を纏わせる丸ちゃん、話し口調のようで落ち着いた歌声を響かせる雛ちゃん、前後の呼吸まで含めてお洒落になってしまう大倉くん。関ジャニ∞のボイスチェンジ、また新たな良さの開拓では?と思うほどの相性。個々の良さが更に際立っている。

どこか不思議な夜の雰囲気を纏う、ふわふわとした浮遊感を漂わせているかと思えば、途端に地に足をつけ重力を孕ませるラップ調へと展開する。歌うだけでも大変そうなこの曲、ダンス曲だと言うのでまた大変そう。川谷さんにとって、今の関ジャニ∞に書こうと思ってくださった曲がこんなに難解なダンスナンバーだったという事が、嬉しくて仕方ない。アウトロのピアノがまたお洒落。最後の1秒まできっと関ジャニ∞の格好良さに気が抜けないものになりそう。油断したら撃ち抜かれる事必至。

 

  • YES

関ジャニ∞にお洒落な曲は似合わない。関ジャニ∞は楽しくて元気で明るい歌が似合う。そんな固定概念をお持ちなら、是非この曲で捨てる事をお勧めする。作詞いしわたり淳治さん、作曲今井了介さんの大人っぽくてお洒落なダンサブルナンバー。それぞれの伸びやかな歌い方と重厚感のあるハモリが特徴的。あまり知られていない気がするが、関ジャニ∞ドゥーワップやハモリがとてつもなく上手いグループ。元々歌声の高低の役割がハッキリ別れているグループだったが、最近のボイストレーニングを経て全員がオールラウンダーになった印象を持つ。とにかく歌声がチョコレートのような甘さを持つ横山さんが歌い出しを務め、この曲の世界観の構築を一手に担っている。そしてバトンを繋ぐのは安定した歌唱力と突き抜けながらも優しい高音が得意な安田くん。リズム感が完璧、軽快かつしっかり重力を孕んだ落ち着いた丸ちゃんの歌声と、ここ最近の伸び代がとてつもなく大きくて音程正確率が高い雛ちゃん、心地良い低音の中に感情を乗せるのが上手い大倉くん。サビで5人の声が重なった時のこの感動たるや。曲の世界観を歌声で語るには、その人の人生の経験の幅や深みが必要だと個人的に思っているが、それが色濃く出ている楽曲。いい歳の重ね方をした今の関ジャニ∞だからこそ歌える。この曲でプロポーズができるのは、今の関ジャニ∞だけ。何万回でも言う。関ジャニ∞、歌が上手い。

 

前作「ジャム」での「えげつない」という曲においてとんでもなくバッチバチの化学反応を起こした岡崎体育さんと関ジャニ∞のタッグ再来。メロディーをはじめ、とにかくお洒落かつ大人っぽい関ジャニ∞が感じられる楽曲。本当に?メンバーの発音も流暢で、関ジャニ∞って英詞も歌えるんだと度肝を抜かれる楽曲。本当に?本当にストレートにお洒落なディスコナンバー?と疑ってかかろう。

アルバムの詳細が発表された時、岡崎体育さん提供曲のタイトルが「町中華」だった時点で、恐らくぶっち切りにファンからの期待を寄せられていた曲ではないかと思う。お洒落な楽曲です、とすんなり終わる訳がない。歌詞カードの中で唯一この曲のページだけが袋とじになっている時点で、最高の仕掛けが約束されている。関ジャニ∞自身もこの曲のレコーディングを「何もよう分からんと歌ってた」との事。歌ってる本人達がよく分からないものを、一発で理解しようとするのが間違っている。謎を解きたい人は、何も言わずにまずはとにかく一聴するべし。そして袋とじを開けて歌詞カードを読んで、衝撃と共にまた聴き直して下さい。2度、3度と聴く度にその仕掛けの面白さと奥深さに平伏する事間違いなし。町中華が食べたい。

 

前山田健一さん作詞作曲。例えば無作為に抽出した100人のファンにアンケートを取ったら恐らく93人位が「歌詞の通りに登場すると思う」と回答する可能性のある楽曲。そして間違いなく歌い出しの歌詞通りにコンサート会場に現れるであろうハズレ知らずの掴みの1曲。「ポップアップ決めてドヤ顔」。絶対にポップアップでステージに登場し、ドヤ顔を決める関ジャニ∞が見られる事間違い無し。ヒャダインさん特有の中毒性のあるメロディーラインと統一性や規則性皆無の怒涛の曲展開が、関ジャニ∞の騒がしさと楽しさに絶妙にマッチしていて相乗効果を発揮している。ヒャダインさんと、関ジャニ∞。どちらが欠けても成立しないこの楽曲の良さの裏には、関ジャムきっかけですっかり仲良くなった双方がワイワイガヤガヤと楽曲制作に当たった背景がある。関ジャニ∞の良さを熟知した人が作って下さった、関ジャニ∞にしか歌えない曲。このアルバムが発表された時のヒャダインさんのコメント「楽しいですよ!ただ楽しい!関ジャニ∞っていいグループですねえ」。この短いコメントにどれだけの想いが込められているか。作り手の関ジャニ∞への愛も同時に感じる事ができる。無作為に抽出した100人のファンにアンケートを取ったら間違いなく100人が開始1秒で実感する。これは私たちが大好きな関ジャニ∞だと。

 

  • ひとりにしないよ

横山さん主演ドラマ「コタローは1人暮らし」の主題歌。優しく落ち着く、落ち込んだ背中に手を添えるような、誰かに寄り添うような丸ちゃんの甘い歌い出しに穏やかでメロディアスなイントロ。今までの関ジャニ∞にありそうで無かったテイストの楽曲。応援ソングは沢山ある関ジャニ∞だが、無理矢理引き上げる強引さは決して無く、雨の中でその人が自ら顔を上げるまでずっと傘をさして待っていてくれるような優しさを持っている。「ひとりじゃないよ」ではなく「ひとりにしないよ」そして「一緒に強くなろう」。口で言うだけじゃなく、ちゃんと隣にいてくれる。上辺じゃなくて、行動に移してくれる。まるで関ジャニ∞自身のようで。優しくて、絶対に立ち上がるまで待っていてくれる人達。関ジャニ∞が歌うから、この曲のメッセージ性が決して上辺じゃなくなるのだと思っている。

ボイストレーニングにより、関ジャニ∞全員の歌い方が変わりつつあった時期のリリース曲だが、個人的に大倉くんの歌唱力の向上を一番感じたのがこの曲かもしれないと思う。と言うのは1番Bメロ、雛ちゃんが主旋律を歌っているパートで上ハモを担当しているのは大倉くん。この曲が発売されるずっと前、ラジオで初オンエアとなった時の話。安定したハモリを初めて耳にしてから、この上ハモはずっと丸ちゃんだと思っていたが、いざ歌番組で蓋を開けたら大倉くんだった事があった。あの低音ハモリばかりを担当していた大倉くんの上ハモが、丸ちゃんと聴き間違うくらいに違和感がなくなっている。今まで「高音は出ない」と苦しんでいた姿からは想像できないほどの変化に、歌に対して真摯に向き合ってきた時間の、想像を絶する努力を思って、関ジャニ∞はまだまだ成長をやめる気はないグループなんだと、胸にくるものがある楽曲。

 

  • ココロに花

城島リーダー作詞作曲、ドラマ「サムライカアサン」主題歌。城島リーダーがTOKIO以外に楽曲提供するのは今回の関ジャニ∞が初めてなんだそう。暖かくて前向きになれるメロディーに、決して背伸びをしない真っ直ぐな言葉達が並ぶ歌詞。「今日がダメでもいいじゃない」「明日また頑張りゃ良いんじゃない」。真っ直ぐなリーダーが関ジャニ∞の為に、と書いてくれた歌詞が、沢山の言葉のプレゼントのようで嬉しい。青い空の下、顔を突き合わせて笑顔で、バンドでこの曲を演奏している姿がとてつもなく似合うし想像が容易。

小細工や誤魔化しが効かないストレートな曲調だからこそ、関ジャニ∞の真っ直ぐなユニゾンやハモリがまた映えると思っている。「向かい風もどんな壁も越えるため其処にあるから」、「今日の失敗なんて明日のための隠し味」。この歌詞は関ジャニ∞が歌うからこそ元気が出る。アスファルトを押しのけて大地に根を張ってきた関ジャニ∞が歌うから、今日もまた頑張るか、と思わせられる。どんな人の、どんな失敗も、どんな後悔も、どんな苦悩も、決して否定しない。そんな日もある。そんな事もある。気にしないで忘れて、じゃなくて、まあそれも抱き締めて進もう、というメッセージが伝わる曲。

 

  • Re:LIVE

関ジャニ∞44枚目のシングルであり、「がんばろう日本! We are OSAKA」のテーマソングとして起用された曲。感染が拡大し自粛を余儀なくされた去年、関ジャニ∞が「会えない時だからこそ何か出来ることはないか」とファンとの楽曲制作に乗り出したのがきっかけとなっている。ファンから募った言葉達をもとに作詞を担当したのは関ジャニ∞メンバーではあるが、作詞のクレジットがファンとの共作である事を示す「Eight × Eighter」となっている事からも、関ジャニ∞が「ファンと共に」という気持ちを大切にしてくれた事が伝わる。「正しい理由誰も判らないでしょう」「信じてくれた勇敢な君を」「僕らが連れ出すよ」の歌詞にメンバー全員の名前が使われているのもまた遊び心があって素敵。

同曲は今回のアルバムを引っ提げて回る全国ツアーのコンセプトにもなっている。Re:LIVE。もう一度ライブの舞台へ。もしかしたらこの曲は、発売から1年3ヶ月の時を経て、有観客の会場で歌って初めて完成するのかもしれない。

蛇足だが、体感的に「ジャニーズに興味はなかったけれど、この曲で関ジャニ∞のことを好きになった」という人が周りに多く居たような気がしている。関ジャニ∞を知らない人にも伝わる位、メッセージ性の強い曲なのだと改めて思う。

 


【完全生産限定盤 Disc2(ソロ曲)】

 

まず作詞横山さん、作曲安田くんの時点で良曲であることは間違いない。温かでどこか懐かしさを感じるイントロに、横山さんの甘くて優しい、低く響く声が心地良い。それなのにサビでは綺麗なファルセットを披露していて、横山さんもまたボイストレーニングを懸命に続けているのだと実感する。元々甘くて良い声質を持っていた横山さんは、水をどんどん吸収するスポンジのように自分の中に新たなものを取り入れようと更なる変化を遂げている。

歌詞をつけるにあたって、横山さんは昔から自分の経験や本音を一つの言葉に乗せたり重ねたりするのがとても上手い。単純に過ぎた過去を懐かしむのではなくて、日常の中でふと目に入る思い出がスイッチとなって、昔を思い出す。昔は冬になると一緒にみかんを食べたけれど、もう君はみかんじゃなくてもっと高価なものを手にしているのかな。僕はまだみかんのままだ、みかんのままでいいやと歌う。ずっと過去に止まったままの自分と、もう未来を歩いている君の対比を、みかんという一つの言葉に乗せて表している。それがとてつもなく絶妙で、距離感が遠過ぎなくて、現実味がある。横山さんのこの等身大の言葉選びに、そっと寄り添うように優しく流れる安田くんが作ったメロディー。やはりこの2人のタッグ、外れがある訳がない。名作。

 

90年代J-POPのトレンディー感をこれでもかと詰め込んだ雛ちゃんのソロ曲。もしかしたら90年代にフリーシーズンが流行ってたかもしれない…?という記憶の改竄まで出来そう。中毒性があり過ぎるメロディーの繰り返しの中で、雛ちゃんが恐らく自分のやりたい事を出し切ったのだろうという構成の楽曲。楽曲の中身について何よりもシンプルな話をすると、雛ちゃんの音程性確率の高さに驚く。普通はここまで高音の音程が続くとファルセットが出がちだが、雛ちゃんは恐ろしい程に地声を突き通す。それがなんと全く無理をしているようには聴こえず、すんなり出ていると思える程。どんなに譜面上で高くまで音が引っ張られても、転調をしても尚、出すべき音に一発で声を当ててしまう天才。音域の広さは一種の才能であり、ここまで安定して歌い切れてしまうのも努力という才能なのだと思う。

コンセプトについては多くを語らず。とにかく音源を聴いて、MVを見て欲しいと切に願う。もしこれからCDを開封する、メイキングも見る、という人が居たらこの曲だけはどうか、音源を聴いてからMVを見るという順番を守って欲しい。先にMVを見たら最後。もうこれ以外のイメージ映像で音源を聴く事は出来なくなる危険性がある。

 

自らの元気印なパブリックイメージをここまで綺麗に脱ぎ捨てた丸ちゃんの、羽化する前の蛹のような神秘さが漂う楽曲。静かな始まりに相応しい囁くような歌声は、今にも消えそうなのに、強さも感じる二面性を持ち合わせている。曲に対してこんな表現は似つかわしくないかもしれないが、まさしく「造形美」な気がしている。美術館で綺麗な絵画を見た時に言葉が出ない感覚に近い。丸ちゃんは歌い方を曲によって自在に変える事ができる凄い人なのだが、こんな歌い方の丸ちゃんは知らない。恐らく初めて見せてくれる顔で、初めて聴かせてくれる歌声。儚さと強さと、脆さと眩しさ、甘さと苦さ。この世に存在する相反する2つを同時に声に乗せる。どんな感性を持っていたらそんな事ができるのだろう。

「血の音で描いた点と線の宇宙」、「目的地の墓」。歌詞が抽象的な小説のようで文学的。この歌詞の意味を紐解きながら、まるでページを進めるかのようにこの曲を咀嚼していく楽しさも同時に味わえる。でも、きっとこの比喩表現に正解はないのだと思うし、聴き込んでいく中でこの歌を聴いて自分の中で答えが見つかるなら、どんな解釈でも一つの正しさなのだと思う。「心臓がとまるその瞬間を唄うのさ」。まるでどんな在り方でも正しいと、聴いた人の人生を唄っているかのようでもある。

MVも合わせて見ると、この曲のカラーは「白」というよりも「限りなく透明に近い」のほうが当てはまる気がする。空気、水、そしてこの曲「ヒカリ」。

 

作詞作曲ともに安田くん。今まで安田くんが作ってきたどの曲ともテイストが似通ってなく、また新たな分野をここに来て開拓するという幅広さ。言葉遊び、テンポ操作、メロディーライン。どれを取っても自由で柔軟な発想がないと成立しないものであり、それらを自在に操ってまるでこの曲を通して遊んでいるかのよう。曲を作れる才能と、歌詞を書ける才能。どちらも持ち合わせた人だからこそ出来るハイレベルな遊びを垣間見ることが出来る。

後ろでずっと鳴っている重低音に、安田くん自身が重ねたオクターブユニゾンのコーラスが綺麗にハマっていく、まるで音とテンポの複雑なパズルのような構成。曲調も絶えず変化していき、まるでくるくると表情を変え、一瞬でも同じ顔は見せてはくれない生きた生々しい人間のよう。本当の曲の表情はどれか?どれが本当の安田くんか?と答えを探したくなる1曲。

ディープな言葉の羅列の中にも、安田くん特有のライムが炸裂していてとにかく圧巻の内容。

雑誌では既にタイトル「9」の意味について言われていますが、アルファベットを前から順に9つ数えてみると、曲が本当に意図するものが分かるかも。

 

大倉くんソロ曲。落ちてはならない恋にハマっていく背徳感と、それでももう戻れない焦燥感がうまく噛み合った大人な雰囲気を纏った曲。コンセプトのみ大倉くんが決めたようで、この世界観を選んだ所に自己プロデュース力の高さを感じる。

静かな歌い出しから、既に湿度100%なのは彼の成せる技。単語一つにしても、呼吸一回にしても、きちんと過不足ない適正量の色気を含ませてマイクに乗せる事ができるのは、長年培われたアイドル力あっての才能なのだろうなと思う。そして何と言っても、音程の運び方。きっと昔の大倉くんなら出ていないであろうその高音を、サラッとファルセットで歌いこなしてしまう。喉の変化が途中段階だと、きっと声が裏返ったように聞こえたり、どこか高音が頼りなく薄い印象を受けるはずだが、大倉くんの高音は既に厚みもあって音程をコントロールする力まで備えている。ここに至るまでの努力を思って、今回のソロ曲で果敢に新境地に挑戦した覚悟を見た。

ダンス曲との事で、コンサートに向けてどのように演出が変わっていくのかも楽しみなポイント。

 


【通常盤】

 

  • ズタボロ問答

関ジャニ∞は多種多様な歌を歌えるからこそ魅力的だが、ズタボロ問答を聴いた瞬間の「関ジャニ∞はこれだ」感は段違い。曲の種類にこの表現が当てはまるかどうかはさておき、実家のような安心感。作詞は上中丈弥さん、作曲は久保裕行さん。さすがのイナズマ戦隊。まるでハンコを押すかのような、紛れもない関ジャニ∞印の曲を作って下さる。

関ジャニ∞は、決して順風満帆ではなかった。「ドブ板をめくって出てきた」と表現されたように、足場も悪い場所でひたすら滑って転んで進みながら、そこに彼らにしか成し得ないものを打ち建てた。0から1を作ってきた人達が歌う「完璧なシナリオが最高の人生だって思わない」「経験こそが俺の辞書」の説得力。かつてジャニーさんが言った「関ジャニ∞は強いよ」の言葉の重みを今一度実感する。

沢山色んなことがあった。沢山の挫折や別れがあった。表からは見えない場所で、関ジャニ∞が今日まで抱えてきた苦悩や迷いは想像もできない程にあるだろう。それでも、今日も関ジャニ∞は変わらずに笑ってくれる。この歌は、何もない場所で泥だらけになり、幾度も幾度も怪我をして、それでも歩くことを、前を向いて笑うことをやめずに今を掴んだ、関ジャニ∞にしか歌えない曲だ。「ズタボロ問答」と書かれた文字は泥で見えなくても、紙はくしゃくしゃでシワだらけでも、差し出されたら受け取りたくなる。抱き締めたくなるような、今の関ジャニ∞の名刺になる1曲。

 

  • 赤裸々

松原さらりさん作詞、南田健吾さん作曲のアップテンポナンバー。フェードインしてくるサウンドから始まるディストーションの強いギターイントロ。普段の関ジャニ∞の暖かさや賑やかさを完全に消した、突き刺すような格好良さを持った歌い出しと、韻の踏み方が心地良い言葉遊びのような歌詞。曲調の激しさから、間違いなくゴリゴリのダンスナンバーだと思われる。 WASABI、Sorry Sorry love、ブリュレと並びそうな系統の曲で、これらが好きなら間違いなく赤裸々も好きになると言い切れる。関ジャニ∞にこういう曲調の歌を歌わせたら、最高という話をずっとし続けられる自信がある。

ステージの真ん中でステップを踏んで、レーザーライトを浴びて、声を上げて歌う関ジャニ∞が見える。タイトルにもなっている「赤裸々」というワードが曲中で連発されていて、激しい曲調の中で思いを抉り取るような切ない歌声が重なる。明るいで元気なだけが関ジャニ∞じゃない。こういった曲調の中で、切ない思いを歌に乗せるのが抜群に上手いのもまた、関ジャニ∞の特徴だと思う。関ジャニ∞、武器が多すぎる。

 

  • サタデーソング

丸ちゃんが司会を務める土曜朝の情報番組「サタデープラス」のテーマソングにもなっている。土曜朝の楽しさ、始まる週末への高揚感をこれ以上なく表現した楽曲。平日の多忙さに疲れ切っている人に向けた、新しい服に身を包んで、お気に入りの靴を履いて、さあ出かけようと手を引いて外に連れ出してくれるような明るさを持っている。でも平日疲れた人は勿論休日は休みたい。ずっと寝ていたい。そんな、2日だけでは到底消化できない5日分の疲れを抱えた人にも魔法の言葉。「まだ始まったばっかなんてちょっと贅沢な気分じゃない?」「ずっとやりたかったこと何でもできる気がするでしょ?」。

憂鬱な気持ちを金曜に置いて、とりあえず嫌な事は忘れて。始まったばかりの贅沢を、何でもできそうな朝の始まりを、捨ててしまうなんて勿体無いと叩き起こしてくれる、めざましアラームのような元気。ちょっと騒がしくて、早く早く!と急かすような気忙しさが、どこか楽しくて元気になる。

この曲の効力は土曜の朝だけではなく、平日にも伸びているということ。この週末が終わっても、また次の週末、このサタデーソングがくれる元気は尽きない。土曜日の朝が来る限り、ちゃんと効力を発揮してくれる活力底なしのエネルギー曲。最後の丸ちゃんのシャウトもとても元気が出て良い。関ジャニ∞の元気印。

 

キラキラした音色に、待ち侘びていた世界が始まるんだと予見させる高揚感を詰め込んだイントロ。息を吸い込んで全員で歌い出す「待ちわびた今日に繋いできた想い」。その舞台を待ち侘びたアスリートへ向けた、リスペクトに満ちた楽曲の裏に、関ジャニ∞もまたステージに立つ事を同じように待ち侘びていた背景がある。歌詞は「夢見てた未来の先へ」

と続く。夢見てた未来へ、ではなく、未来の先へ。この曲の終着点は、そうなったらいいな、こうなりたいな、という夢を見ていた未来そのものではなく、未来の先にある世界である。未来に辿り着いてもまだ歩みを止める事はない。アスリートも関ジャニ∞も同じ。見据えるのは先の先の先。そんな強い想いが楽曲から感じられる。

曲調も、歌詞に込められた想いもとても壮大なものだけど、関ジャニ∞がここまで積み上げてきたのは毎日の小さな小さな努力と舞台に立つ事を諦めなかった心だと思う。またその「舞台」が再開を迎えるその時まで心に燃えている炎を消さないように、関ジャニ∞は走り続けてくれた。今この曲が、タイトル通り関ジャニ∞を「歓喜の舞台」に連れて行ってくれる。5人の真っ直ぐな想いが伝わる、自然と涙がこぼれ落ちる1曲。

 

 

 

 

デビューして17年。

メンバーの名前もそれぞれの特徴も、バラエティの立ち回り方も世間によく浸透したグループだが、彼らの音楽への情熱はまだ底が知れない。制作陣に投げ掛けられた「今の関ジャニ∞がどう見えるか」という一つのテーマを元に作られた今回のアルバム。その答えは何だったか。今の関ジャニ∞は、今をときめく制作陣にとってどう見えていたのか。彼らは、どストレートなラブソングも、大真面目にふざける振り切ったコミックソングも、誰かの心を撃ち抜くメッセージソングも満遍なく歌える。求められた事は、何でも出来るのだ。ただしそれは、長い年月をかけて確立され、音楽に対する弛まぬ努力に裏打ちされた、揺らぐ事のない「関ジャニ∞の音楽」という土台の上に成り立っている。どんな注文にも答える、どんな難題にも挑む。何でも出来る人達で、器用にこなしてしまう様にも見えるが、楽曲全てに自分達の血を通わせるのは決して容易な事ではない。


今回の、ジャンルも制作陣も何もかも異なる数多の楽曲達の共通点は「今の関ジャニ∞がどう見えるか」という問いへの「答え」であるという事だ。格好良くて、泥だらけでガムシャラで、大人でお洒落で、全力でふざけることも出来て、誰かに手を差し伸べる優しさもある。一つも印象の被らない楽曲達だが、漏れなく全てに関ジャニ∞の血液が通っている。どの曲に触れても関ジャニ∞の鼓動が伝わり、体温を感じる事が出来る。

 


もう一度問いに戻る。

今の関ジャニ∞がどう見えるか。その答えは綺麗に並べた言葉でもなく、取って付けたような理屈でもない。このアルバムがその問いへの何よりの「答え」であり「証明」である。そう感じられる1枚だと思う。

関ジャニ∞がこのアルバムのリリースにあたり、「関ジャニ∞でよかった」という言葉を掲げている。関ジャニ∞でよかった。あの時も、この瞬間も。どんな事があっても。関ジャニ∞でよかったと、他でもない関ジャニ∞自身が言ってくれるから。同じくらい、いや、それ以上に思う。出会えたのが、応援しているのが、好きになったのが、他でもない「関ジャニ∞でよかった」。

 

 

関ジャニ∞の音楽を知らない?

関ジャニ∞の音楽に触れた事がない?

ならば、これから知って欲しい。関ジャニ∞を好きになるのに、関ジャニ∞の音楽に触れるのに遅過ぎる事は無い。

 

 

 

 


彼らの鼓動は今この瞬間にも、このアルバムを手にした者に届いている。